朝7時、モンゴル、オノン川、通称(といっても名づけたのは平野だが)チンギスハーンプールの岬に立つ。ラインを伸ばしていると、沖合で「ドボン」というライズ音。その1分後にはそれより少し岸よりで「ドボン」。魚は狩りに夢中になっている。しめしめと二つのライズの円周上をフライがスイングするように35mほど投げる。オリジナルフライのオノントラベラーはうまい具合に水しぶきを上げて着水し、スイングが流芯を越えたあたりでアクションを付けると、「待っていました」とばかりに「ドスン」。こんなに簡単にタイメンを釣った事はない。
ファイト中にいったん底に張り付いたので、メーターオーバーを期待したが、ランディングしてみると90pジャスト。良く太ったタイメンだった。オノントラベラーには今回自分だけでも8本のタイメンが喰いついた。たまに釣れるレノックも殆どが50pオーバーだ。もうオノン・バルジでこのフライは大物用フライと言っていいのだろう。
2シーズンほどオノンを訪れなかったので、キャンプオーナーのガンスフやガイドのアムガーはずいぶん寂しがっていたそうだ。10年前と同じ場所に立ち、3人で記念撮影をする。みんなそれなりに老けたみたいだ。それでもオノンやバルジの川岸に立つと、都会生活で失われていた野生が蘇ってくる。しばらくはこの旅を続けることが自分には必要なようだ。